1990年代ごろからだと思いますが、美術雑誌や文芸雑誌の研究が盛んに行われるようになっています。それにともない、様々な大学や研究機関で、雑誌のアーカイヴ化が進んでいます。これらを利用すると、どんな芸術家や知識人たちが、どんな媒体で、どんな考えを発信していたのかを知ることができます。多くの場合、文章だけでなく、視覚的なイメージ(挿絵や写真)も含まれているので、雑誌の著者と読者がどのような思想や美学、趣味を共有していたのか、イメージと文章の関係がどのようなものなのかといった問いを立てるのにも、これらのアーカイヴは有用です。
雑誌研究では、どのような材質を用いているのか、どのような広告が載っていて、どれくらいの値段でどの地域に売られているのか、なども重要な情報なので、出来るだけ実物を調査することが好ましいのですが、いつでも実物にアクセスできるとは限りません。そんなときは次のようなアーカイヴを利用してみましょう。前衛的な美術雑誌は、字体や表紙など、とってもおしゃれなものが多いのでみているだけでも楽しい時間が過ごせます。

ブラウン大学が1995年に開始したプロジェクトで、1890年から1920年までの英語圏の雑誌をアーカイヴ化しています。雑誌に関連した著書もアップされているので、ぜひのぞいてみてください。
1880年から1945年までの英語圏を中心とする芸術・文芸雑誌のアーカイヴです。このプロジェクトをベースにした著書もすでにオックスフォード大学出版から刊行されていています。雑誌研究の一つのロールモデルといって良いでしょう。
プリンストン大学にある前衛雑誌をアーカイヴ化したサイトです。英語圏だけでなくフランス語圏の雑誌も含まれています。アメデ・オザンファンの雑誌『レラン』がすべてカラーでアップされているのは個人的に嬉しい点です。
アイオワ大学が母体となって進めているプロジェクトで、ダダの雑誌だけでなく、デ・ステイユなど様々な国の前衛雑誌が含まれています。まずは雑誌一覧(Didgital Dada Library)で何があるのかを確認してみてください。作家リストでは、その作家が書いた詩や論考がオンライン上で読めます。
フランス国立美術史研究所のプロジェクトの一環で作成された目録です。まずはここからアーカイヴに入って、検索してみてください。全ページのスキャンはありませんが、詳細な書誌情報(値段や編集者、配給地域、その雑誌について書かれた先行研究)などがわかります。実はこのプロジェクトに私もイーンターンシップとして関わっていました(Les Soirées de Paris とLabyrinthe を担当しました)。Dépouillement という項目をクリックすると、雑誌の目次をすべてエクセルに打ち出したデータをみることができます(例えば『Labyrinthe』はこれ)。このリストを見るだけでインターン時代の苦学生生活が懐かしく思い出されます。Gallicaで検索すれば、全ページをみることができるものもあります(ただし白黒です…)。
個別の雑誌をアーカイヴするサイトもいくつかあります。例えば1968年から1971年まで出版された雑誌『Avant Garde』。60年代前衛の息吹を生き生きと感じることができます。
※もしまだ追加すべきアーカイヴをご存知でしたら、ぜひご一報を。
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